全身的リスク

1.循環器疾患のリスク

高血圧症 (Hypertension)のリスク

  • 最高血圧(収縮期血圧)が140mmgHg以上
  • 最低血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上

このどちらかが高くても高血圧症と診断されます。
内科にて血圧がコントロールされていない患者様は、局所麻酔時および手術時に不安、緊張、恐怖のため血圧が容易に危険な状態までに上昇します。

治療を受けない人、薬を中断する人の多くは

  • 痛くないので
  • がんではないので
  • 薬を飲み続けなければならないのでいや

と言います。

高血圧を放置すると、下記のリスクが高くなります。

  • 動脈硬化
  • 心筋梗塞、狭心症
  • 脳卒中の発作
  • 腎臓疾患(腎硬化症を引き起こし人工透析の可能性もあります)

自覚症状もなく進行し、上記の疾患を発症する危険性があるため「サイレントキラー」とも呼ばれています。
恐いです。
内科(循環器科)で診察の上、血圧をコントロールすることが大切です。

インプラント手術時には、生体モニターをつけて血圧、脈拍、呼吸、心電図などの管理をすることが大事です。
また、血圧の上昇、心拍数の上昇時には心筋(心臓の筋肉)酸素消費量が上昇しますので酸素の持続投与も必要となってきます。
特に高血圧の方はストレスのかかる手術、不安、緊張、恐怖を軽減させるため静脈内鎮静法を併用することをお勧めします。

高血圧の方が持つ脳卒中、心筋梗塞、心不全の危険因子

高血圧に以下の疾患が一つでも合併すると高リスクになります。

  • 脳血管障害(脳出血、脳梗塞など)
  • 心疾患(狭心症、心筋梗塞、心不全、心臓手術後など)
  • 血管障害
  • 腎臓障害、腎不全
  • 糖尿病
  • 高血圧性網膜症
  • タンパク尿など

その他リスクのある方

  • 喫煙者
  • 肥満
  • 血液検査でコレステロール値の高い方、中性脂肪の値が高い方、高血糖の方
  • 血縁関係者で心血管病がある方

局所麻酔薬リスク

アドレナリン含有の局所麻酔薬:使用量制限、あるいは心不全、動脈硬化、甲状腺機能亢進症、糖尿病、血管痙攣を合併している方には使用しない。

アドレナリン非含有局所麻酔薬を使用する:非含有局所麻酔薬を使用しても手術時のストレスで内因性のカテコラミンが大量に体内で産生されるので、鎮静療法の併用が望ましいと思われます。

処方薬のリスク

血圧を下げる降圧剤、ラシックスを内服している方は、セフェム系の抗菌薬を避けた方が良いです。

鎮痛薬:腎臓の血流量を減少させるため血圧を上昇させることがあります。
歯科でよく使われるボルタレンは高リスクです。
ロキソニン、バファリン、アスピリン、カロナールは低リスクです。(短期間少量でより低リスク)

2.不整脈

不整脈とは?

脈(心臓が拍動するリズム)が不規則になった状態、脈(心拍数)が正常値よりも多い(頻脈)、または脈が正常値よりも少ない(徐脈)状態をいいます。

インプラント治療時のリスク

危険な不整脈もあるため、循環器内科主治医との連携が必要です。
心臓の人工ペースメーカーを入れている方は、必ず歯科医に伝えてください。
術後内服する抗菌薬(抗生物質)の選択にも注意が必要です。
(クラリス®、ジスロマック®、クラビット®に注意)

3.狭心症

狭心症とは?

心臓の筋肉に酸素を供給している動脈(冠動脈)が細くなったり、けいれんしたりして心臓が血液不足(心筋虚血)を生じて胸の痛みや胸の圧迫感を生じる疾患です。
お薬を飲んでいる方、冠動脈バイパス手術等をされている方は必ず申し出てください。

インプラント治療時のリスク

過去6ヶ月以内に狭心症発作があった場合は、手術の適応ではありません。
内科医から処方されている薬はすべてお知らせください。

4.心筋梗塞

心筋梗塞とは?

心臓の筋肉が心臓の冠動脈の閉塞によって酸素の供給を受けられず壊死した状態です。

インプラント治療時のリスク

心筋梗塞を発症した時期、内科医から処方されている薬はすべてお知らせください。
抗血栓療法(抗凝固薬、抗血小板薬)内服中の方は出血傾向があります。
内科医との連携が必要です。
日常生活で階段を2階まで昇ると一休みする方、2階まで一気に昇れない、日常的に呼吸困難がある方は必ずお知らせください。

心臓ペースメーカーを使用している方のリスク

  • 電気メスは使用できません
  • イオン導入器は使用できません
  • 歯石を取る超音波スケーラーは使用できません
  • エアースケーラーは使用可能です
  • 根管治療時の根管長測定器は使用可能です